第3章 ❤︎ 結婚記念日 赤葦京治
ショッピングモールは平日だというのにそれなりに賑わっていた。一人ではたまに来てたけど二人で手を繋いで見て回るのはいつぶりだろうか。雑貨や服からペットショップ…隅々まで見て回った。少しでもいいななんて言うと京治は“買おうか”って私を甘やかそうとする。優しすぎるところも甘すぎるところも付き合ってた頃となんら変わってないのが嬉しかった。
買い物の後、フードエリアでしばしの休憩。ベンチには大きな紙袋が四つも並んでいる。
「なんだかんだ結構買っちゃったね」
「全部必要なものだから」
「来月のカードの支払いがちょっと怖い」
「その辺は心配なく…。そのために働いてんだから」
「いつも働いてくれてありがとね」
「その代わり寂しい思いもさせてるから」
「そんなの気にしなくていいよ。だってこうやってデートできるんだもん。今も十分幸せだよ」
「そう言ってくれるから俺も頑張れる」
そんな会話をしていると目の前で4歳くらいの女の子が転び、持っていたポーチの中のビーズが散らばってしまった。コロコロとベンチまで転がってきたビーズを京治と拾い集めながら女の子へ渡す。
「はい、落としたよ」
「ありがとう」
「ちゃんとお礼が言えるの、偉いね」
「お母さんが教えてくれたの」
「そうなんだ」
「はい、これ。拾ってくれたからあげる」
「え?」
ポーチの中から取り出したのはカラフルな色紙で折られた折り鶴。小さな手にちょこんと乗っている。
「まゆが作ったの」
「へぇ、上手だね」
「うん!おうちにもたくさんあるの。これがお父さん鶴でこっちがお母さん鶴」
ちらっと覗いたポーチの中にはビーズやおはじき、たくさんの折り鶴が入っていて、私の手に大きな鶴を二羽、小さな鶴を一羽手に乗せてくれた。