第3章 ❤︎ 結婚記念日 赤葦京治
「あ、出来たら言って?運ぶのくらいは手伝うから」
「そこで待ってて」
「ごめん」
「もう最近私に謝ってばっかだよ?」
「ここ最近は早く帰れてないし申し訳なくて」
「何言ってんの。京治の仕事って24時間いつ呼ばれるかもしれないし、ちゃんと帰ってくれるだけ嬉しいよ?」
「……けど」
「ダメだよ、そんなんじゃ。」
「しかしお前らラブラブだな」
「そういう木兎さんは相変わらずみたいですね。優勝祝いを俺たちにしてほしいなんて。恋人、まだいないんですか?」
「さっきもいちかちゃんに言われた」
「でしょうね。少しは期待したんですけどね」
「誰かいい子がいれば紹介するんですけど」
「うん、もういちかちゃん頼みだから!」
「言っとくけどそんなに頑張らなくていいから」
「なんでだよ!?」
「なんとなくです」
テンポのいいやり取りを聞きながら、仕上げのスパイスを適量振りかけていく。京治も帰って来たし、もうすぐメインが完成してテーブルに並ぶ。やっと待ちかねていた時間の始まり。
「はい、もうすぐ焼き上がります。お皿準備して二人ともいい子で待っててください」
「待ってました!いちかちゃんの飯なんて合宿以来!!」
「俺は毎日食べてますけどね」
「羨ましすぎんだよ」
「どうぞ羨ましがってください」
「くそー。言い返せねぇのが悔しい!!」
ビールのグラスを重ねて“おめでとう!”と交わせば一気に気分は高まった。久々のアルコールに気を良くして少しだけあの頃に戻って昔話に花を咲かせた。私にはこんな素敵な時間があるんだって思えば行き場のない思いだって閉じ込めることができる。だからなんにも問題ない、これからだって大丈夫、私はそう思っていたんだけど…。
ただ、木兎先輩の目にはそうは映っていなかったみたい。