第13章 ❤︎ 岩泉先生の彼女と及川先生
「すげぇな」
「こんな贅沢できるなんて夢みたいだけど…」
「なんだよ、不満あんの?」
「天気もいいしここからの展望も最高なんだけど、お湯がこんな透明じゃ隠せない。てっきり乳白色とか勝手に想像してた」
「別にいいだろ?」
「やだ。丸見えになるもん。ねぇ、タオルで隠してていい?」
「タオル湯舟に浸けんのはマナー違反だ」
「だってぇ」
「今までも何度も見てんだし今更恥ずかしがるなって。」
「久しぶりだもん、やだ」
「いいから。ほら、ぐだぐだ言ってねぇで入れ」
「じゃああんまり見ないでよ」
「分かってる。ほら、入らねぇと体冷やすぞ」
「はぁーい」
檜の香りがぐっと濃くなり湯に体を沈めれば丁度いい温度に思わず吐息が漏れる。さっきまで必死になって運転して心乱してやって来たってのになんでこんなとこでこんな事してんだってつい現実を忘れそうになる。
すぐ隣には愛しい彼女。髪をアップにして項から肩に流れるラインが綺麗でその横顔はいつもよりもずっと大人びて見える。
「私ね、今日先生とデートできるって思ったら眠れなかったの」
「俺にちゃんと言えよな。及川に頼まなくてもどこか連れてってやったのに」
「でも、卒業するまでは周りにバレるのが怖いもん。もう少しで卒業だし…」
「ったく…お前らしいっつうかなんつうか…。帰りは俺が送ってくから」
「うん…」
「今度からは何かあったらちゃんと言えよ?」
「うん。絶対そうする」