第13章 ❤︎ 岩泉先生の彼女と及川先生
こんな風に思う感覚なんて今までなかったから、いつもいちかの言葉は新鮮だった。好きって言葉以上に想いを伝える術を知らなかったから初めはどう受け止めていいのか分からなかった。
今もこいつの甘えたいって欲求に弱いのはこういう理由なのかもな。ま、それも含めて好きなんけど。
「んじゃ入るか?」
「うん」
先に風呂に案内し、適当にTシャツを用意してから浴室に入った。ドアを開けると全裸のいちかがいきなり抱きついてくる。
「お前…」
「入ろっ」
そんなキラキラした目で嬉しそうに見やがって、……ほんっとたまんねぇわ。
「ほんとにお風呂って一人用なんだ。ラブホみたいにお風呂でえっちできるかなぁって思ったけどこれじゃ無理だね」
「だから言っただろ?」
そんなに汚くはないけど古いアパートゆえに狭い風呂。まさかこんな形で使う事になるなんて思ってもなかったな…。
「なぁ、卒業したら俺んとこに来んの?」
「そのつもりだけど…、ダメなの?」
「ダメじゃねぇけど、ここで2人は狭いなって」
「お風呂もねぇ。全然足伸ばせないもんね」
「だからお前が来るってんならどっか引っ越すのもありだな」
「え?ほんと?」
「教員になりたての頃は家賃が安いからってここに決めたけど、お前と一緒に住むってなると何かと不便だからな」
「えー、じゃあ本気で考えてくれてるんだ」
「…まぁな。それなりに責任もとりてぇし」
「私はベッドが置けるところならどこでもいいから。卒業したら適当にバイトでもしようと思ってるけど、近くのところで探すし」
「その辺は好きにすればいいから。途中で進学したいっつってもいいって言えるようにしとくな」
「だから進学はしないってば」
「はいはい。…けど、一応な?」
俺のせいでこいつの人生変えちまったって言って過言ではないし、出来れば結婚とかもこいつがしたい事してからだって遅くねぇのに。
「ねぇ、先生…。私、幸せだからね」
「…ん」
「今日はワガママに付き合ってくれてありがと…」
ほんとに可愛い奴だから、守ってやりたいって思うんだろうな。