第11章 ❤︎ 年下男子の好機 佐久早聖臣
「なんか悔しい」
「今は逆にいちかが子供みたいだな。…鼻声だし」
「泣いていいって言ったじゃん…。そう言えば聖臣って超潔癖じゃなかった?私、涙と鼻水でドロドロなんだけど」
「いちかなら別に」
普段なら涙や鼻水も垂らしてたら睨みつけられてそうな状況なのにそれって私が特別ってことじゃない。ぽっかり空いた心の隙間にふんわりと温かい感情が埋まっていく。
「狡いよ…」
そう言うともう一度私を抱き寄せて触れた耳と頬に口付けていく。後ろ髪をかき上げて頸に触れた唇にゾクっとした感覚が走る。
「ん…っ」
「………いちかの体が冷えてる」
「窓開けてたから少し冷えてきたかも…」
「じゃあ、こっち」
聖臣は自分のシートを後ろに倒し私の手を引いて上に乗るよう誘導する。
「いや、それは…」
「逆は無理だから。いちかが潰れる」
「そうだけど…」
「暖房もつけるけどこっちの方が早い。……それとも何か期待してる?」
「期待なんてしてない。恥ずかしいだけ」
だってこんな状態で体を密着させちゃったら…、多分私の方が持たない。どうすればいいか考えてたら手を掴まれて聖臣の方に雪崩れ込むように倒れる。
「聖臣?」
体を引き剥がさそうにも両腕でがっちりと固定するように体を抱きしめられている。
「期待して…、もっと」
耳元で囁かれた言葉に体は動かなくなってしまって、聖臣のペースに完全に呑まれてしまった。抗うなんて到底無理なことだ。