第11章 ❤︎ 年下男子の好機 佐久早聖臣
もう頭はぼーっとしてて反射的に顔を上げた時には唇が重なっていた。びっくりして目を見開いて後、涙がひとつ流れていくのがスローモーションのように感じる。
「ごめん、………したくなった」
唇を放しながら呟いた言葉に状況を理解しようとするけど内心は焦りまくっていた。
「…え、あれ?今…」
「いつまでも泣き止まないから、吃驚させたらどうなるかって…」
暗がりでもはっきりと分かった。聖臣が口角を上げて意地悪く笑っているのを。
「吃驚するに決まってるでしょ…。こんな、いきなりキスなんて…っ」
「本気だから」
「本気って。ちょっと待って。私と聖臣は幼馴染だし、歳の差もあるのに。そもそもなんで私?」
思いっきりテンパってて変な質問してしまって聖臣は笑うのを堪えている。
「理由なんてない。気付いたら好きになってた」
「笑わないでよ。人が真剣に焦ってるのに」
「見れば分かる」
「そうやっていつも冷静にからかうんだから」
「からかってはない。いちかが好きなだけ」
「もう…っ」
聖臣の告白には驚いたけどずっと自分を責めていたから誰かに認められることに、少しだけ心が軽くなったように感じたのも事実。
「でも。……なんかごめんね。私もいい大人なのにずっと格好悪い…」
「謝らなくていいよ。俺はいちかを特別な大人だとは思ってないし」
「それどういう…」
“意味”と言いかけた途中で目尻の涙を拭うように唇を這わせた。ペロリと涙を舐めとる仕草がとても色っぽく映って今目の前いる彼は私の知らない聖臣みたいだ…。
「……なった」
「何?」
「…いつの間にか聖臣が大人になった」
ぐすっと鼻をすすり聖臣を見る。でも相変わらず聖臣は表情を変えずに私の反応を見て楽しんでいるみたいだ。