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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第11章 ❤︎ 年下男子の好機 佐久早聖臣


「会社は?辞めるの?」
「ううん、辞めないよ。だって仕事は好きだもん。休んだら向こうに帰るよ、ちゃんと」
「だったら俺は弱いとは思わない」
「………え?」
「努力すればそれが結果に全て繋がるわけじゃない。努力を続けて後悔のない瞬間があればいいってだけ」
「後悔のない瞬間?」
「自分が納得する終わり方ならそれでいい、俺はそう思う」
「自分が納得…かぁ。そうだよね、確かに私一人が納得できなくて落ち込んじゃってたのかもしれないなぁ」
「だったら納得するまで追い求めるか、いっそ吹っ切るか…」

愛される努力も続けてきたけど私の求めた未来じゃなかった…。いや、未来すらなかった。追い求めるものすらない。

「そのどちらかの選択なら吹っ切るしかないんだよね」
「ならそうすればいい、と思う」
「こうやって聖臣と話すと聖臣の方が落ち着いててなんか調子狂っちゃう。聖臣が落ち着いてるのは前からか…」

聖臣の言う通り吹っ切ることさえできたら後悔だって消える。そうしなきゃいけないんだって少し気持ちが動いた気がする。

「ってごめん。久しぶりに会ったのにいきなりこんな話しちゃって」
「俺は他人の話を聞くのは苦手だけどいちかの話は聞きたい」
「ありがと。まさか聖臣にこんな事聞いてもらうようになるなんてね」
「俺も、それなりには成長した」
「うん。聖臣が今、活躍してるのもちゃんと知ってる。試合も時々観てたんだからね。すごく格好良くて別人みたいで。でもこうやって話すと懐かしいよね」

お互い少しずつ大人になったのに、なんだか不思議な気分だった。

「……いちか?」
「どうしたの?」
「夜は空いてる?」
「うん。特に予定はないけど」
「車出す」
「…え?」
「どこか行こう」
「聖臣の車?買ったの?」
「父親の車を譲ってもらった」
「……すごい…」
「俺もオフだから。ゆっくり話もしたい」
「聖臣からそんな風に言ってくれるなんてなんか嬉しい」
「じゃあ20時迎えに行くから家で待ってて」
「うん。分かった。待ってるね」

こっちに戻ってきて友達にも会って沢山話を聞いてもらった。それでも重いままだった気持ちが聖臣と少し話しただけで軽くなった気もする。

“また後で”と手を振る聖臣の背中を見送りながら茜色の空を見上げた。

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