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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第10章 及川の彼女 岩泉一


「馬鹿だよ…」
「それは分かってる」
「違う、…私が……。私だって嫌いになれたらどんなに楽だったか…」

時々言葉を震わせながらぽつりぽつりと話し始める。戸惑いながらも俺を真っ直ぐに見て……。

思えばこうやってちゃんと顔を見て話すのも随分久しく思える。いつだって変わらない。俺の好きだったいちかはあの頃より少し痩せたように見えるけど、好きだった頃の姿だ。

「あの時だって最後までしなかったもんね。……ずっと、抱き締めてくれてたもんね」
「………無理矢理なんて出来るわけねぇよ」
「ほんとは嬉しかったのかもしれない。こんな風に私の事を引き留めてくれる人がいるんだって、でもそれは後になって気付いたの。……なんの運命のいたずらだろうね。同じ大学に入って同じ講義受けて、一君を見る度にいつも後悔してた」
「それは及川に対しての後悔か?」

“…ううん”と首を横に振る。言葉にしなくても今にも泣きそうな表情が全てだと思った。

「だったらもう…、答えを決めろ」
「答え?」
「後悔なんてもうさせねぇから。だからもう一回俺にチャンスをくれねぇか?」
「…でも」
「今、俺んとこ来ねぇと一生幸せになれねぇぞ」
「でも、私、どうすればいいの?」
「また一から始めればいいじゃねぇか」
「そんなのでき…」
「俺がいるだろ」
「へ?」
「俺が幸せにしてやるって言ってんだから、そのままのお前でいいんだよ。何も飾ってないいちかのまんまでいいから…」

くしゃくしゃに顔を歪ませて涙が頬を伝っていく。高校生の時いちかが俺に告白してきて俺がOKと返事を返した。あん時より大人っぽくなったくせに泣き顔は変わんねぇな。
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