第2章 ❤︎ 幸郎「寂しいって素直に言えばいいのに」 星海光来
スマホのナビアプリはホテルの場所を指している。目的地までの所要時間は電車で二時間弱とご丁寧に電車の乗り換えまで知らせてくれている。思えば出かける時は光来か幸郎がいてくれたし二人に頼りきっていたけど、これなら無事に辿り着けそうだ。
あの光来が〝寂しい〟なんて思うことがあるんだろうかって未だに信じられない。会ったら何を話そうか、ドラマみたいに感動してくれるかな、なんて頭の中は忙しく少し先の未来を描いている。あの光来が〝寂しい〟なんて未だに信じられなくて、電車に揺られている間はずっと光来のこと考えていた。
「シティボーイホテル…、ここかな?」
目的の場所に着いたのは15時を少し過ぎたところだった。光来から聞いていたホテルと同じ名前だからここで間違いはない。だけど問題はここから。電話したところで光来が来てくれるとも限らない。
「あっつ…」
そして何よりこの暑さ。電車の中は冷房が効いていて天国だったけど、このアスファルトからの照り返しの灼熱地獄。疲れがどっと押し寄せる。
「いちか…っ」
「……え?」
あれ?今、光来が呼んだような?これは暑さにのぼせちゃったかな。なんてぼんやり声のする方に視線を移すとそれは紛れもない光来の姿だった。
「光来?…どうして」
「今幸郎から電話あっていちかが来てるって。嘘かと思って窓から外見たら制服姿が目に入ってそれで」
「そっか、私、制服のままだった」
「いきなりどうした?なんかあったのか?」
「光来に…、会いたかったから」
あ、だめだ。言葉にしちゃったら感情が溢れてくる。
「寂しいって言ったら幸郎が会いに行けって。光来も同じ気持ちだからって。…だから来ちゃった」
驚いた表情の光来のを凝視できなくて人目も憚らす抱きついてしまう。あれ、そういえばつい一週間前もこんなシーンがあったような気もしたけど今は会えただけで嬉しい。