第2章 ❤︎ 幸郎「寂しいって素直に言えばいいのに」 星海光来
どこでそんなキザな台詞覚えてきたんだろう。でもその言葉にグッときちゃってる私もいる。
「…ちょっと幸郎。あんたなんか主役級のヒーローみたいなこと言ってるね」
「俺だってたまには主役っぽいこと言ってみたいし」
「やだ、かっこいい…。光来の次にだけど」
「いちかのNo. 1を奪うつもりはないよ」
「でもその表現はちょっと無理」
「辛辣だね」
「ごめん、多分暑さのせいだから…ってそんな会話してる場合じゃないよね」
「全くね。とりあえずさ、会いたいなら会ってスッキリしてくれば?」
「……でも、ほんとにいいの?部活」
「大丈夫だから」
「幸郎、ありがとう。大好き。光来の…」
「次にね…。じゃあ今から行ってきなよ」
「うん。会えるか会えないか分からないけど行ってくる」
「光来君にもよろしく伝えといて」
「うん。後のことは頼んだからね」
「了解」
方向音痴だし無事に宿泊先のホテルまで辿り着けるかも不安だけど、せっかく幸郎がくれたチャンスを無駄にしたくない。額を伝う汗をハンカチで拭って鞄にしまい〝行ってきます〟と告げた。幸郎はにっと笑って背中を押してくれた。
「お互いに“寂しい”って素直に言えばいいだけなのに…。そこが可愛いよなぁ。あの二人は」
その後でそんなことを幸郎が呟いていたことを私は知らない。