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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第10章 及川の彼女 岩泉一


前は何かあるとすぐに泣いてたくせに、目に涙を浮かべても唇を噛んで耐えるように顔を伏せる。手を伸ばせばその震える肩を抱き締める事も出来るのに、なんで体は動くかねぇんだ。

そして無情にもいちかのスマホの着信音が鳴り響く。画面には“徹”と表示されている。

「徹君が帰って来たのかな…。ごめん、もう私行かなきゃ…」
「……行かせるかよ」
「駄目だよ。ちゃんと話してこなきゃ」
「……なんでっ」
「一君にはちゃんと謝らなきゃっていつも思ってた。………こんなことになって、本当にごめんなさい」

それで?それで全部自業自得だからって、これからもずっとそうやって無理して笑ってんのかよ。今から及川に会って、それで自分だけ傷ついてそれで終わりなのかよ。

鳴り響くスマホを取り上げて床に置かれたクッションに投げつける。その反動で部屋の端の方に滑り転がっていく。画面にヒビが入り、徹の文字はひび割れた中に浮かんでいた。

「離して…」
「行かせねぇ」
「電話に出なきゃ…」

いちかの瞳から大粒の涙が零れているのに気付いて胸が苦しくなる。色んな感情が込み上げて、スマホに伸ばした腕すら掴んで自分の方に引き寄せ抱き締めた。

「一君、お願い」
「このまま及川のところになんか行かせたくねぇんだよ」

今持てるだけの力で精一杯抱き締めたら、いちかはこのまま傷つかなくて済むのかだったらこのままずっと腕の中に閉じ込めておきたい。


嫌がる素振りを見せても所詮女の力。片手でも十分なくらいだった。

もう重ねる事はないと思っていた唇。柔らかな下唇を舐めるように侵入させた舌で強引にキスを交わしていく。何度か歯が当たり、血の味が混ざってもキスを止める事はなかった。

スマホはまた音をたてて鳴り響く。静かな部屋に鳴り響く音は俺に対する警鐘なのか?だけど、そう思ったところでもう後戻りはできない。

例え相手が親友であっても、一番大切なものを傷つけた罪は重い。






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