第10章 及川の彼女 岩泉一
「でもね、私たちももうすぐ終わりだと思う…。徹君は私の事なんてもう見てないから。今日は多分5組の川本さんと会ってる筈だから」
「お前全部知ってて待ってたのか?」
「私が他の女の子に会わないでって泣いて縋ったらどんな反応するかなって。私も一君の事を思いっきり傷つけちゃったもん。私だって同じように傷ついて当然なの」
「お前が及川に惚れたのは仕方ねぇと思ってる。誰にだって気持ちが揺らぐ事だってあるだろ。…要はお前を繋ぎ止められなかった俺の不甲斐なさだろうが」
「そうやって格好つけないでよ。全部私が悪いに決まってるでしょ?どうして…、私の心変わりも許すの?」
「…んなの、決まってんだろ」
「何?」
「お前が一番大切で好きだったから、身を引いたんだ。それがあの時の最善策で、後悔は何回もしたけどいちかの為には間違ってねぇってそう思ってる」
「……馬鹿だよ、一君は」
「自分でもそう思うわ…」
「…でも、良かった」
「何がだよ」
「…もう一度一君と話が出来るならちゃんと全部話したかったから。それで私の事を軽蔑してさっさと私の事なんて忘れて欲しかった、いっそなかった事にして欲しかったの。だからね、最後に本心が聞けて良かったってそう思ってる。私にはもう十分過ぎるくらいだよ」
「最後って何だよ」
「だって私、自分のしたことを考えると一君に顔向けなんてできなかった。勝手に浮気して一君傷つけるようなことして、こんなの自分が一番許せない」
「俺が許しても駄目なのか…。俺はもうお前になんもしてやれねぇのか?」