第9章 ❤︎ 真夜中のプロポーズ 澤村大地
丁度今くらいの4年前にプロポーズしてもらってるしお互い自然とそのつもりで一緒に過ごしてきた。だからこの成り行きだって特に驚かないし大地君はまだ春までは学生な身分ではあるけどなんの不安もなかった。
「大地君、パパになるんだよ」
「…マジ…で?」
「えへへ。嬉しい?」
「全然まだ実感ないし信じられないけど、なんか感動してる…」
あれ?ちょっと目が潤んでる?大地君の感極まった様子に私も嬉しくなる。
「よかった。大地君のことだから反対はしないだろうけど、どうやって伝えようか迷ってたから…」
「そっか、ありがと。……いちか…」
エコー写真をまじまじと見つめる横顔は優しく笑んでくれた。そんな横顔を見てるだけで胸につかえた不快感も少し軽くなったように感じる。でも急に顔を上げたかと思うと次は顔を青くさせて私を見る。
「……いやでも待って。俺はご両親になんて説明すればいいんだっ…」
「付き合ってるの知ってるじゃん。大地君が家に来るたびに早く嫁にもらってもらえって言われてるんだし、なんの問題もないでしょ?」
「それに俺がデキ婚って…それじゃあ後輩に示しがつかないじゃないか。西谷や田中辺りがマネしてもいかん…。いやでも最近は授かり婚とか結構前向きな方向に……、いやでもやっぱり…」
え、心配するのそこ!?なんて大地君にしては珍しく表情もころころと変え焦っている様子。ついには頭を抱えながらあーでもないこーでもないとブツブツ言い始めた。
卒業してもまだみんなと繋がってるのも知ってるし、大地君が慕われてるのも分かってる。でも未だに後輩に示しって…。この人はいつまで彼らの主将なんだろうかとちょっと呆れてしまいそう。でもいつまで経っても後輩思いな大地君が好きなのは間違いのないことで、誰からも慕われている大地君が私の誇りでもあった。
まだお腹の小さな赤ちゃんが大地君の背中をみてどんな子どもに育つんだろうとか、そんなことを考えると自然と頬も緩む。