第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
セットが終わるとそれぞれに衣装が用意されていた。それぞれのイメージで用意したという衣装。乗り気な三人をよそに仮装パーティでも着ねぇようなタキシードに俺は違和感しかなかった。
花「めっちゃ新郎じゃん俺たち」
松「グレーのジャケットにピンクのネクタイって及川らしいな」
及「そう言うまっつんはネイビーね。渋いね。年相応に見えるよ」
松「待って、俺の年齢何歳設定な訳?」
及「30代くらいじゃない?」
松「高校生だからね、これでも…。花はベージュ系…、なんか可愛いな」
花「うん、このカラーは俺っぽいよな。でもさ、この中で一番しっくりきてんの、岩だと思うんだよな」
岩「はぁ?なんでだよ」
松「それは俺も思った」
及「白タキシードは正直俺かなって思ってたんだけど、岩ちゃんが白だとは思わなかった。でも中のベストが黒っぽい色だし、似合わないこともないよね」
岩「素直に似合うって言えねぇのかよお前は」
花「でも鏡の前でこうやって4人並ぶと実際岩が一番格好いいかもしれない」
松「うん。いちかちゃんは純白のドレスだろうしね…。本当の結婚式みたい」
及「待って!それは俺の役目だから」
花「まぁ今はいいじゃん、いちかちゃんの着替えが終わるの待とうよ」
松「それにしてもさ、こうやって着飾った男たちが女の子を待つシーン、なんか見たことある光景だな」
花「バチェ○レッテ?」
松「そう、それ!」
岩「なんだよそれ」
花「恋愛理リアリティショーの番組。数人の男が一人の女性にアプローチして真実の愛を探す的な?」
岩「はぁ?なんだよ、ふざけてんのかそれ」
松「いや、本人たちは結構真面目にやってると思うよ?」
及「ま、数人の男が一人の女の子を奪い合う、そんな世界、岩ちゃんには一生理解できないだろうね」
岩「理解したくねぇよ」
花「でもさ、着飾った俺たち見たらいちかちゃんは誰を選ぶと思う?」
及「俺でしょ…、この中で一番華があるから」
花「と見せかけて俺かもよ」
松「ワンチャン俺もなくはない、大人の色気で」
及「岩ちゃんは?話にのってこないの?」
岩「興味ねぇよ、俺は」