第2章 ❤︎ 幸郎「寂しいって素直に言えばいいのに」 星海光来
速度を落とした電車の窓から光来の姿が見えた。泣きそうになるのをぐっと堪えてその時を待つ。電車が停車しドアが開いた瞬間、満面の笑みを浮かべた光来が目に入る。
「いちか!幸郎!」
相変わらずテンションが高い。“おかえり”って声をかける前に人目もはばからずハグをされ、苦しいくらい抱きしめられた。
「待って待って。ここ駅の中だから」
「いちか〜っ!」
ぎゅうっと力強く抱きしめられて光来の匂いに包まれる。ずっと待ってた瞬間。
「光来君、あんまキツく抱きしめるといちか、窒息するよ?」
「え、幸郎もして欲しいって?」
私を抱きしめたまま幸郎に向けて片手を挙げる。幸郎はスマホをかざしてヘラヘラと笑いながら首を振る。
「いや、いい。この光景だけでお腹いっぱいだから」
「久しぶりなんだからたまにはノってくればいいのに」
「そういうタイプじゃないからね」
「とりあえず、光来っ、一旦離して」
「なんで?」
「一応、公共の面前だから」
「ああ、そっか」
体が解放されてやっとちゃんと目を合わせることができた。二週間しか離れてなかったのに、顔を見るだけでこんなに安心できるなんて思わなかった。
「おかえり」
「ただいま!」
にかっと笑う表情に自然と口角が上がる。私たちのいつもの日常が戻ってきたように感じた。