第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
松「そっか…」
「ふざけてる時もあるけどいい奴だと思うし、可愛いって思う時も……なくはない」
松「その感じならいいんじゃないの?って思うけどな」
花「岩ってさ、ちゃんと好きだって思えないと次に進めないタイプだよな?好きかもって曖昧なくらいじゃ自分が納得しないというか」
「…普通そうだろ?」
花「いや、俺は好きかもって思った瞬間、告ってる」
「花巻らしいな」
花「でもそういう時が一番楽しいんじゃん。俺、二人の関係ってめちゃくちゃ羨ましい
松「俺も…。いちかちゃんの真っ直ぐな想いを聞いたら応援せずにいられないんだよ。岩にとっては余計なお世話でしかないだろうけど」
「全くだ。裏で何こそこそしてんのか知らねぇけどいちか側についてるってことだけは分かったわ」
花「そういうこと。俺たちいちかちゃん応援隊だから」
松「あ、あとね後もうひとつ余計なお世話で教えといてあげる」
「何だよ。まだあんのか?」
花「後少しでいちかちゃんのバイト、終わるから」
松「ってことで俺たちの役目はこれで終わり。二人の邪魔にならないように先に帰るから」
花「まさかいちかちゃんを置いて帰るとかしなよね?」
「待てばいいんだろ?」
松「大正解。じゃあ俺たち先に帰るからね」
花「もし進展あったら報告な?」
「お前ら人で遊びすぎだから」
花「それもこれも全部岩のため。じゃあまた明日学校で」
松「そうそう。俺たちお邪魔虫は退散するよ。また明日ね」
「ああ。また明日…」
二人を見送ったあと、壁に凭れ窓越しから聞こえてくるいちかの声に耳を傾けていた。綺麗な夕日が沈んでいくのじっと見つめながら深く息を吐く。
何を企んでバイトなんてしてるのか知らないけど、どうせまた無茶なことしてんだろうな…。んなことしなくても俺は………。