第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
「で?バイト探してるの?」
「そうなの」
「なんかいいのあった?」
「それがないの。長期とかならあるんだけど」
「バイトってやっぱり岩絡み?」
「正解。実はさ、一君の誕生日プレゼントまだ渡せてなくて」
「何にするか決まってるの?」
「できればシューズ…。高校生のお小遣いじゃ無理だから休日に短期バイトして貯めようかなって」
「それでか」
「松川君はいいバイト先とか知らないよね?」
「うちの叔父さんとこの蕎麦屋とかならバイト募集してるよ」
「え?ほんと?」
「俺も暇な時たまにバイトしてるし。聞いてみてみようか?」
「いいの?」
「全然いいよ。いつから働ける?」
「土日なら今週からでも大丈夫」
「OK、ならそれで。あ、でも連絡先とか聞いていい?」
「うん、全然いいよ」
「いいの?この前及川には教えてなかったのに」
「それは及川君だからだよ。花巻君とも交換してるし松川君なら全然大丈夫」
「えらい警戒されてんだな」
「というかさっさと諦めて欲しいだけ」
「なるほど…。そりゃそうだよな」
「でももう一つ問題があるの」
「何?」
「ほんとはサプライズで渡したいんだけど好みとかサイズが分からないし」
「及川なら知ってるんじゃない?部活の帰りによく二人でシューズ見に行ったりしてるから」
「え?じゃあ及川君に聞けば分かるかな」
「と思うよ」
「じゃあ、ちょっと聞いてみようかな」
「それか俺がさり気なく聞く?」
「でもそれじゃ怪しいよね。どうしようかなぁ…」
いちかちゃんも頑張る気でいるんだし俺だって何か手助けできたらって思ってた。二人で頭を抱えていると噂をすればなんとやらってやつで俺はふと外からの視線を感じた。視線を上げると噂の張本人である及川が恨めしそうにコンビニの窓に張り付いていた。