第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
俺たちは少し遅れてから合流した。最初は気不味そうにしてたみたいだけど他の部員や先輩たちも歓迎ムードで出迎えると恥ずかしそうに会釈した。
一通り先輩達が声をかけた後は、俺たち四人がいるテーブル席へ着く。及川はハイテンションだし、岩も表情こそ変わらないけど声色が明らかに嬉しそうだった。いちかちゃんの気持ちを知ったからだからか余計に岩泉に向ける表情が違うようにも見える。とにかく笑顔が弾けていた。
いちかちゃんは岩が好きで、岩も案外満更でもない感じに見えるのは俺だけか?及川と岩泉に挟まれてもう三角関係が成立しちゃってたら最高なんだけど、そんな展開期待しちゃっていい?
「なぁ、まっつん…、岩なんか嬉しそうじゃね?」
「花巻もそう思う?あんな試合だったし無言で肉食いちぎってそうだったけど機嫌いいよな」
「俺もどうなることかと思ったんだけど」
「いちかちゃん効果かな」
「そうだろうな」
「これはやっぱ応援しないと」
「花巻も知ってるの?いちかちゃんのこと」
「もしかしてまっつんも気づいた?」
「気付いたというかまぁ色々あって」
「俺さ、合宿のゴタゴタがあってから思ったんだけど岩には幸せになってもらいたいのよ」
「分かる。俺もそうだし。しかもさ、いちかちゃんと岩って案外お似合いだもんな」
「うん。絶対いいカップルになると思うんだ」
「じゃあさ、俺たちは二人が上手くいくように協力しよう」
「そうだな。俺もそうする」
「うん。ってことで俺は無料のソフトクリームとってくるわ」
「ここのソフトクリーム、好きだな」
「結構美味しいんだよ。トッピングも無料だし…、ちょい行ってくる」
「はいはい…」
花巻が席を立ち俺は目の前の三人の様子をじっと見ていた。及川も岩もいちかちゃんにしか意識は向いてないし、どう見たって三角関係にしか見えない。