第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
「星賀ちゃんの気持ちは分かったけど、正直厳しいと思う。岩だってもう半年前の岩じゃないから。…俺が言いたいのはそれだけ。……じゃあまた学校でね」
それだけを言い残して俺はいちかちゃんを急いで追いかけた。ここでちゃんと捕まえて打ち上げに連れて行かないと怒られそうだし。
向かった先で後ろ姿を見つけたいちかちゃんはなぜか分からないけどフラフラしながら歩いていた。
「ちょいちょい、大丈夫?」
「あ、松川君」
「え、なんでそんなげっそりした顔してんの!?」
「ごめん…。私、ちょっと興奮しすぎたかも…。今めっちゃ足ガクガクして上手く歩けへん」
「嘘だろ?俺に掴まって」
杖をついて歩くおばあさんのようによろよろと俺の腕に掴まる。とりあえず近くのベンチに座らせた。
「本当に大丈夫?さっきまでの勢いどこ行ったの?」
「この前呼び出された時より今日の方が腹立って我を忘れるくらいにキレてしもたし。…疲れがどっと出てこんなんやったら今から打ち上げはちょっと無理かも」
「いや、それは困る。治るまで待つから。遅れてもいいし歩けないならおぶってでも連れてくから」
「そこまでせんでええけどほんまごめん…。私、迷惑かけてる」
「全然そんなことないから。あれは俺でも腹立つし。…でもいちかちゃんはちゃんと言いたいこと言えた?」
「言いたいことどころか言うたらあかんことまで言うて返り討ちにあった気分。あんなん完全に私の方が悪者やん」
「いちかちゃんに悪いところなんて一つもなかったと思うけど」
「けど星賀さんにとったら」
「俺はさ、見てて格好良いって思ったよ。少なくとも俺はスッキリしたし…。頑張ったな」
「全然頑張ってへんもん。強がっただけや…」
悔しそうに口を尖らせて一点を睨む。強がっただけって素直に言っちゃうの…、なんかさ……、そういうの、すごく……、