第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
迎えた試合当日。一回戦は無事に勝ち進み迎えたシード校との二回戦。目の前で及川が活躍するのを悔しい思いで眺めながら俺は自主的にアップし、呼ばれるのをベンチで待った。
そして試合のほぼ互角で迎えた最終セットで流れを変えるべく呼ばれたのが俺だった。
コートに立った瞬間、なんとも言えない緊張感に息が荒くなる。平常心とは程遠い自分のコンディションに戸惑う。
ふと視界に入った普段は気にすることもない客席。誰よりも真剣にコートを見つめる柳瀬の姿があった。その瞬間、すっと気持ちが落ち着いた気がした。一度立ち止まり深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。皆がいるコートに向かって一歩を踏み出した。
そして二回戦はフルセットの末、俺たちは負けた。