第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
「余計なこと言話なくていいから。つーか朝からそのテンションマジで勘弁してくれ…。母ちゃん、飯!」
「あ、じゃあ私が装います」
「いつからお前は母ちゃんになったんだよ」
「いずれ嫁ちゃんになりますけど?」
「そうね。もう母さんの仕事じゃないわね。これからはいちかちゃん頼める?」
「もちろんです」
「いい。自分でやるわ」
「恥ずかしがらなくていいのに」
「でもそんなところも格好いいです」
「そんなこと言ってくれるの、この先もいちかちゃんくらいよ。一!あんたいちかちゃん泣かせるようなことしたらこの家から追い出すからね」
「なんつー母親だよ」
だめだこいつらの会話聞いてるだけで疲れてくる…。合宿がきつかったせいで昨日までの俺はどうかしてたんだな。絶対そうだ。俺は卵焼きを口いっぱいに頬張ると二人の会話も無視して無言で飯をかき込んだ。
玄関のドアを開けると朝日が眩しくて目を細める。インハイ予選までは後二週間だ。相変わらず家の中は落ち着かねぇけど俺は練習に集中するのみだ。