第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
翌朝からはまたいつもの日常に戻る。リビングの卵焼きに味噌汁、俺用のどんぶり茶碗。変わり映えのしない朝飯と仲良さげに母ちゃんと話してる柳瀬がいるのももう慣れた。
「あ、おはようございます」
「……はよ。…昨日まで合宿だったのに元気だなお前は」
「昨日沢山食べて一日寝たら完全復活しました」
「単純で羨ましいわ。俺は眠い」
「朝練は明日からですか?」
「そう。だからゆっくり飯食えんのも今日まで…」
「残念。朝はいつもすれ違いだから」
「クラスも同じなのに何がすれ違いだよ。朝飯も夕飯だってうちで食って顔合わせてんのに」
「でもゆっくり話す時間なんてないじゃないですか」
「何か話すことでもあんのか?」
「なんでもいいです、バレーのことでも二人のこの先についてでも」
「話にならねぇな」
目を輝やかせる柳瀬にため息しか出ない。そんな俺らをじっと見つめる視線、先には母ちゃんが嬉しそうに微笑んでいる。
「何、見てんだよ」
「当初に比べると仲良くなったわね。いい感じな二人に母さん嬉しい」
「はぁ?」
「それが今すごくいい感じなんです」
「そうなの!?合宿が二人の距離を縮めてくれた的な?」
「合宿の魔法ですよね。昨日なんか…」
「おい!余計なこと言うなって」
「え?なになに!?何があったの」
「いろんなことがあったんです。私にはすごく嬉しいことが…」
「そうなの?そうなのね!一は何にも言わないけど二人の雰囲気見てたら何かあったのかは感づいてて、……あーん、気になるじゃない」
「じゃあそれはまた後日」