第7章 ❤︎ 堅治君だって\ちゃんと/反省できるもん 二口堅治
お昼休みも残り20分って時になってやっと堅治が帰ってきた。特に悪びれた様子もなく当たり前のように私の作った弁当を広げて食べ始める。
「俺、野菜嫌いなんだけど」
「食べなさい」
「俺のやるからいちかの卵焼きちょうだい」
そしてこの態度。幼馴染だったとはいえ、少々甘やかしすぎたかな。
「で?」
「何が?」
「今日は他校の子に声かけたんだって?」
「なんで知ってんの?」
「余計なお世話焼いてくれるクラスメイトの子に聞いた」
「ふーん。なんか用事があってうちに来てたらしいけど可愛かったから声かけただけ。ダメもとで番号聞いたんだけど邪魔が入って聞けなかった」
「そりゃそうでしょ。初対面なのに」
「天然っぽい子だったからいけるかなって思ったけど」
「あのさ、一応、確認しとくけど。私って仮にもあんたの彼女なんだよね?何堂々とナンパしてんの?」
「ナンパとかじゃないし。こんな男ばっかの学校で出会いないからな」
「普通彼女いたら出会いいらなくない?」
「誰かに紹介できるだろ?可愛い子と知り合いだったらマウントとれるし」
「マウントって…」
「彼女いて可愛い子の知り合いいたら羨ましがられんだよ」
「ごめん、その考え全然分からない」
「何だよ、別に浮気してるわけじゃないだろ?それか何?お前の妬きもち?」
こっちはそれなりに本気なのに適当にあしらわれると正直傷付く。こんな会話いつものことだけど時々私の存在って何なんだろうって思う。
「お前が気にしなければいいんじゃね?連絡先交換したってそれ以上のことはないんだし」
そんなに楽しそうに話さないでよ。大好きな卵焼きも喉を通らなくなる。今だって胸が詰まって息も苦しいのに…。
「そういうことじゃない」
「何が」
「…もういいや。堅治の好きにしたら?ご飯途中だけど、もう行くね」
「…なんだよ、いちか。ノリ悪ぃな。卵焼き残ってんならもらっていい?」
「いいよ。…全部あげる」
「マジ?サンキュー。あ、でも野菜はいらない」
何食わぬ顔で私のお弁当から卵焼きを摘んだ。私は小さくため息をついて教室から出て行った。途中、青根君とすれ違ったけど声をかけることもなく通り過ぎた。