第6章 ❤︎ 侑に振られた責任を治にとらせる話 宮治
「ちょ、待てって」
「分かると思うけど私もすごくドキドキしてんの。思い切っちゃって言うけどキスしたついでにさ、私から侑を消してくれない…?」
「消すって」
「こういうことなんだけど…」
右手は下半身めがけてなぞるように指這わしていった。制服のズボンの肌触り、ジッパーをゆっくりと指で確かめていく。
「や、…それは、あかんやろ」
「あかんくない」
手の中で柔らかく収まっているのを優しく包み込み、ゆっくりと上下に動きをつけていく。次第に質量を増していくと治の口から漏れる吐息にひとり体を熱くさせる。互いの吐息がかかる距離感に、たまらなく興奮してる自分がいる。
「ふ…っ、……んっ」
「声、可愛いね…。そういや男の子のこういう声、ちゃんと聞くのって初めてかも」
「俺やって、初めてなんやけど」
「初めてなのに。しかもこんな無理矢理なのに抵抗しないの?」
「……よう言うやん」
「何?」
「据え膳食わぬは男の恥やて」
「何それ。遠回しな言い方するね」
「それに……。ここで何もできんといちかが余計に傷つくと思ったから」
治の言葉に暫く何も考えられなかった。私が傷つくなんて台詞、どうしたら出てくるんだろう。さっきまで名前もちゃんと知らなかったくせに投げやりな自分を治なりに受け止めてくれようとしてるんだってその時に初めて気付いたから。
「治もそんなこと考えるんだ」
「自分でもよう分からんけど、放っておいたらいかん気がして」
感情が一気に込み上げて鼻の奥がきゅんと痛くなる。絶対泣いちゃう、でもこのまま泣いちゃいたいって思いっきり治を抱き締めた。
「こんな時に優しい言葉くれたらもっと好きになっちゃうじゃん…」
「……好きとか、もうええて」
もちろん治の返答に期待なんてしてない。でも抱き締めた腕を振りほどかないなら僅かな期待値に賭けるだけ。
「ごめん。でも私はもっと治のこと知りたい。もっと好きになりたい」