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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一


「わざわざこんなとこ選ばなくても地元でいればいいのに。そっちの方がいいだろ?」
「でも地元には一さんはいないから。こっちに来たのは一さんに会うためで」
「それなんだけどさ、朝も言ったけど俺は許嫁とか婚約者とかんなもんはいらねぇからな」
「でもまだ初日です。何も始まってないです。少しだけ時間をください」
「つってもよ」
「本当に私のことが嫌で○したくなるくらいに憎い存在に成り下がった時には尻尾巻いて帰りますので安心してくださいね」
「○すくらい憎いってどうなんだよ、人として終わってるだろ」
「そのレベルで私のことが嫌いになったらその時は諦めますので」

朝の時のみたいに悪気なくニコッと笑う。なんかこいつ相手にしてたら調子狂わされるというか疲れるというか…。なんかため息しか出ない。
「それはいいけどよ、お前なんでジャージなんだ?別人みたいなんだけど…」
「あ、これは、単純に服が汚れちゃうから。前の学校のジャージだし全然まだ着られるので」
「あっそ」

やんわりと断ったって全然応えねぇし、なんかよく分からねぇけど関西人って皆こういうノリなのか…。こいつはこいつでまたダンボールを引き摺ってるし。引越し業者も気を利かせて中まで持ってきてくれりゃいいのに。どう考えてもこいつ一人じゃ部屋に運び入れるのは絶対に無理だ…、ったくなんで俺が…。

「あ、いいですよ。私運びますから」
「出来ねぇだろが」
「いや、引き摺ったら持っていけると思います。一階だし」

そう言う癖によく見れば白い手は赤くなって段ボールの端切れで擦ったような痕も残っていている。

「……運び終わったら帰るから」
「え?」
「勘違いすんなよ」
「ありがとうございます…」

嬉しそうな顔して律儀に頭まで下げたって俺の気持ちは変わらない。俺は無言のままただ置いてあるダンボールを部屋に運び入れた。ちらっと見えた内装は確かに外観よりは悪くはなく外から吹き抜けていく風は気持ちよかった。

「じゃ、俺は帰るから」
「あ、お茶でも。確かペットボトルのお茶が…」
「いらねぇよ」
「でもっ」
「運び終わったら帰るっつっただろ」

自分でも愛想のない言い方が気になったけどこんなやり方自体、俺は気に入らない。俺に愛想尽かして親元へ帰るのは1番いいってことも分かってる。
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