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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一


足取りの重く家に帰るとあの女はいなかった。しんと静まったリビングのソファーに腰かけると一気に緊張の糸が解けたような気がする。

「一、帰ってたの?」
「ああ…」
「あの女、帰った?」
「あの女って何て言い方するの?」
「いやだって名前…、忘れた」
「我が息子ながらバレーしかできない馬鹿だと思って来たけど本当に馬鹿だったのね」
「それはまた酷い言い方だな」
「いちかちゃん、いちかいちかちゃん」
「あー、そうそう…、確かそんな名前だったな。で、もう帰ったのか?」
「今は借りたアパートで一人引っ越し作業してるわよ。あんたが手伝ってあげないから。私が行っても大丈夫ですってそればっかりで…。ほんとはうちでお預かりしたかったのに」
「いやそれこそ無理があんだろ!?」
「でもいつかは説得して同居よ!あんな可愛い子」
「なぁ、俺の意見は?」
「あんたそのうち好きで好きで仕方なくなるわよ。いちかちゃんに一目会った瞬間、ビビビってきちゃったから。二人の結婚式のイメージまで湧いちゃたんだから」

それはもはや妄想だろ?俺も自分の母親がここまでヤバいとは思ってなかった。
「折角今夜お祝いしようと思ってたのに今夜夜行バスで一旦向こうに帰るんですって」
「そのまま向こうで暮らしてくねぇかな、俺のためにも」
「あんたねぇ。いい加減にしなさいよ」
「こっちのセリフだよ」
「ったく肝心の息子もこんなんだし、先が思いやられるわ」
「そもそも親が勝手に決めたことだろ?」
「いい?いちかちゃんを泣かせたら母さん許さないから」
「勘弁んしてくれよ…」
「心配なのよ。あんたよりもあの子が…」
「俺はいいのかよ」
「あんたは私が何言っても聞かないでしょ?でもいちかちゃん女の子だから…。アパートだってわざわざあんな古いところじゃなくてもいいのに…。本人はここでいいって言い切るもんだからあれ以上言えなかったけど、せめて新しいところ探してあげなきゃ」
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