第72章 結婚するまで帰れません(１)　岩泉一

「あれ？岩、来てたんだ」
「ああ…、遅れて悪かったな」
「体調不良だと思ってたから良かった」
「体調は万全だ」
「あ、マッキーも練習のあとさ、岩ちゃんに付き合ったらラーメン奢ってくれるって」
「まじで！？」
「花巻には言ってねぇんだけど？来るなら自分で払えよ」
「えー？たまにはいいじゃん、奢ってくれたって」
「俺も小遣い少ないんだよ」
「それは俺も同じだって。じゃあまっつんも誘って奢ってもらおうかな」
「結局いつものメンバーじゃねぇか」
「じゃあまっつんも誘って居残り練習決定だね」
「強制参加に決まってんじゃん」
「そういうことなら俺もやるわ。練習遅れた分取り戻す」
「岩ちゃん、ほんと真面目なんだから」

いつもならうざいとさえ感じる及川の絡みも今日はなんとも思わない。今朝のことはもうなかったかのように俺は練習に集中した。

及川にも“調子いいじゃん”と言われるくらいに吹っ切れて、その後の追加の練習も滞りなく終わり俺たちがラーメン屋を出たのは日が傾き始めた15時過ぎだった。