第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
「なぁ、知ってる?俺まだ高校生なんだけど?」
「18から結婚できるらしいわよ」
らしいってなんでそんなにアバウトなんだよ。18から結婚出来ることくらい誰でも知ってんのによ。
「俺まだ16なんだけど知ってる?」
「お母さん、ちゃんと恋愛期間のことも考えてます」
いや、そんなドヤ顔していうことじゃねぇしな…。どっからそんな自信が出てくんだよ。
「つっても俺、婚約者とかいらねぇし」
「いちかいちかちゃんっていう子なんだけど、一と同い年の可愛いお嬢さんよ。兵庫県からこっちに今日越してくる予定なんだけど、もうそろそろうちに着く頃じゃないかしら」
「聞いてる?俺の話」
「とにかくつべこべ言わず会いなさい。会ってちゃんと話をして決めなさい」
「だから今から部活…」
「それなら休みまーすって及川さん家に連絡してます」
「は?何勝手に…。しかもなんで家…」
「及川さんとことはママ友だから」
「それは知ってる。…じゃなくて俺に婚約者がいたなんて今まで聞いた事もなかったんだけど?」
「そうね…。ま、確かにお母さんが婚約者の存在をつい最近まで忘れてたとしてもよ?あんたには可愛い婚約者がいるって事実はもう変えられないからね。今日はちゃんと会いなさい。会えばきっと好きになるから」
もうどっからツッコんでいいのか分かんねぇ…。自分の母親なのにあまりにとんちんかん過ぎてついてけねぇ…。
「つーか親父は?親父の意見もあんだろ?絶対反対してんだろ」
「お母さんが早々に論破しました。息子が一生結婚できなかったら将来介護もしないし同じ墓にも入らないって」
「マジかよ…。論破ってよりほぼ脅し…」
ほんと何やってんだよ、頼りねぇな…。一応俺、一人息子なんだぞ?いいのか、こんなんでよ。