第6章 ❤︎ 侑に振られた責任を治にとらせる話 宮治
「…大丈夫、なん?」
「なに?心配してくれてるの?あんまり覚えてないクラスメイトのこと?」
「覚えてないわけやないって…。名前と顔が一致せぇへんかっただけ」
「それを覚えてないって言うんじゃない?」
「でももう覚えたし」
「ちゃんと覚えておいてね。名前はいちかだから。いちかって呼んでよ」
「苗字じゃあかんの?」
「だめ」
「あいつもまた面倒な奴、相手にしたもんやな」
「じゃあ面倒ついでにいうけど、今日はもう一つ治に相談」
「まだなんかあんの?」
「侑のことはもう過去のことだから綺麗に忘れるつもり。で、今、私が治のことを好きになりかけてるって言ったらどうする?」
「……は?」
「もちろん冗談じゃなく、本気で」
じりじりと距離をつめて治の目を真っ直ぐに見つめた。気不味そうに治は目を逸らしたってだめ。今日は逃がしたくない。
「治のさ、その綺麗な横顔がお気に入りなんだよね。侑と顔がそっくりだからじゃなくて、なんていうか侑にはない透明感?ピュアさ?なに考えてるのか全然読めない表情が好き。……壊しちゃいたいくらいに好き」
侑に振られたからって当て付けなのかな。でも多分そうじゃない、何かをきっかけに私の方を向いてほしかったのはほんとのこと。治を困らせようが私を意識してくれるのなら一向に構わない。
「なんてね。好きなのはほんとだけど、壊したいってのは冗談」
「……足の一本でも折られるんかと思たわ」
「そんなわけないじゃん。…でも、私のこと少しは意識して欲しい。恋愛経験が少ないなら私で経験値ぶち上げたらいいじゃん」
「めっちゃ求めてくるやん」
「そりゃそうでしょ?顔はそっくりなのに性格も髪の分け目も違うその頭の中を私でいっぱいにして欲しい」
私の存在をちゃんと知ったのもついさっきのことだろうけど、でもそれはもう過去の話。