第69章 ❤︎ 黒尾鉄朗と岩泉一、どちらを選びますか?
微笑みの裏で見え隠れする本心が牽制する。敵に回したら厄介だな…それが黒尾さんの第一印象。あながち間違ってなかったっつーことだ。
「ってことだから岩泉サン、悪いけど今回はそっちが引いてくれたら助かるんですけど」
挑発的に笑うのが癪に触る。過去にどんな男と付き合ってようが関係ねぇけどここまで煽られたらこっちだって譲る気はない。
「それは無理な話だな。今まで仕事絡みで付き合ってきて俺の性格もよくわかってんだろ?」
「もちろん。んじゃどうします?早い話、いちかに選んでもらいます?」
「ま、そうなるだろうな」
「でも俺らいい大人なんで…。手っ取り早く決めましょうよ」
「なんだよ」
「俺にいい案があるんです。あ、もう敬語じゃなくてもいいよな、俺らタメだし」
営業スマイルのようにわざとにっこりと笑って見せる。この感じ、俺はよく知ってる。マジで油断したらこっちが喰われんじゃねぇかってあいつに似た感覚を覚えた。
「どういう意味だよ」
「鉄朗って、あ、鉄朗って言っちゃったけどちょっと歪んだ性癖持ってるっていうか…。今まで付き合った人の中で一番癖が強いんです」
「自分の女寝取られてんの見んの好きなんだよ。んでその後、物足りないって啼くいちかを寝取った男の前で犯すの。それが最高にいいんだよ」
「お前大丈夫か?ぶっ飛んでんな」
「じゃ何?思春期真っ盛りな男子高校生みたいに彼女を賭けた勝負でもする?」
「するかよ。ガキじゃねぇんだしよ」
「じゃいいじゃん。やりましょーよ?俺ん家近くだし」
「そういうのって鉄朗と別れてからしてない」
「じゃあいいじゃん。たまにはハメ外して遊ぼうぜ。岩泉さんって多分俺が見てきた中で過去一で手強い相手だと思うから」
「マジで言ってんだな?」
「俺はいつだってマジだけど?相手が岩泉さんでも譲りたくないんでね」
「上等だ」
「んじゃ、そうと決まればお手並み拝見といきましょうか?」
俺を真っ直ぐに見てニヤリと煽るように口角を上げる。こんときにもっと冷静でいられたらまた違った選択肢もあったかもしれないけど煽られんのが嫌いじゃねぇ性分の俺はまんまと乗せられてしまった。