第5章 ❤︎ 三日間ハメまくった記録 黒尾鉄朗
「ピンポンピンポンだいせいかーい」
「え、ちょ、鉄朗!?」
「なぁ、これビデオ通話できんの?」
電話越しとは言えいちかに対して怒鳴りつけるような声にイラッとしてスマホを取り上げてビデオ通話に切り替える。画面の向こうにはなんともひ弱そうで冴えない男の姿。思わず“ いちか、お前、こんな冴えない男と付き合ってんの?”と煽るつもりはなかった(ということにしておく)けどつい口が滑ってしまう。
「おっと失礼しました。どうも新しい彼氏の鉄朗君です。いきなりだけどお前もう用済みだからなー」
「用済みって、いちかに…っ、代われよ」
「嫌だ。お前のいちかに対する態度さぁ、最悪なんだけど舐めてんの?」
「お前には関係ないだろ」
「それがあるのよ…。大体お前みたいな奴がいちかを幸せにできるわけないじゃん。悪いけど今日から俺がいちかの彼氏だから。沖縄から帰ったら荷物まとめて出て行けよ」
「ど、どういう事だ?いちかは?」
「俺のいちかに気安く話しかけねぇでもらえる?」
「こんな、いきなり…、許されることじゃない」
「今更お前にあーだこーだ言うつもりはねぇよ。彼女一人幸せにできねぇ男の言い訳なんて興味ねぇもん」
あえていちかと映るように抱き寄せ二人画面に収まる。相手の戸惑って焦る姿はなんとも滑稽だった。
「早い話、いちかはお前じゃなくて俺を選んだって事。それだけ」
「……ごめんね急に。でももう一緒にいられない」
「お前、俺を裏切るのか?そんなこと、うちの両親だって許さないからな」
「許してくれなくていい。私も、愛情がないのに一緒に居て欲しくないんだ」
「お前、何言って…」
「私はお母さんの代わりにはなれないから。あなたはあなたで、大切な家族を大事にしてあげてください……」