第68章 ❤︎ 青城3年とルームシェア
「強引すぎるから。今って自粛しなきゃじゃん?人と会っちゃいけないんだよ?」
「俺はずっと自宅待機してたから。それにまだこっちには感染者も出てないし今のところは大丈夫だと思う」
「でも怒られるよ?」
「誰に?」
「ゆり子…」
「それは東京の話な?」
「同じだよ。いずれこっちも感染者で溢れちゃうよ」
「だからそうなる前に来たんだよ。あ、岩も花も同じような状況らしいから後で来るって」
「私の家に?」
「そう」
「なんでよ」
「元マネージャーが心配なんだろ?俺だってそうだし」
「もう卒業して半年経つよ?」
「その半年間、会えてなかったし」
「だからってこんな急に」
「ほんとはずっと一人で淋しかったんじゃない?」
そんなことない…って言えなかった。仕事も解雇されて海外の両親からの仕送りでなんとか生活しててお先真っ暗で不安しかなかった。松川は上下スエット姿でノーメイクなブス極まりない私を優しく抱き締める。ソーシャルディスタンスを守って濃厚接触しちゃダメって連日のように東京のゆり子が言ってるのに、でも何でこんなに温かいんだろうって思わず涙腺が緩みそうになる。
だって松川は一年前まで特別な人だったから。こうやって会いに来てくれて私の事心配してくれて、今でもちゃんと理解してくれてるんだって嬉しくなる。
「淋しい思いはさせないから。だからここで俺もいさせてくれる?」
「そんな風に言われたら断れないじゃん」
「断るなよ」
「うん…って思わず言っちゃいそうな雰囲気だけど、でもさっき花巻や岩泉も来るって言ってなかった?」
「来るよ」
「なんで?」
「俺が呼んだから。あと泊まるんじゃなくて住む、な?」
「住むって言ったってさぁ、松川がうちに来ることになったら岩泉も花巻も立て続けにそうならない?」
「そうなるかもしれないけど最終的にはいちかが決めたらいいよ。でもこのご時世、一人孤独に過ごすよりはいいと思うけど」
「展開が急すぎるって」
「こっちにも感染者が出たらこの話もなくなるかもしれない。地方でもちらほら出てるし時間の問題だって思ってるけど」
「そりゃそうだけどさぁ」