第12章 春疾風
(遠い…。)
本日の隠し任務は、物資の輸送である。
先輩達と一緒に、隣の拠点まで荷車を押して背嚢を背負い、歩く、歩く。
剣技の才は無いものの、鬼殺隊の一員として訓練している私たち。
隊士や荷物を運んだり、私のように負傷者の救護をしたり、他にも戦闘時の避難誘導、伝令、遺族対応、隊服の裁縫係まで幅広い仕事を担っているが、一番は体力勝負である。
春も終わりに近づいた日差しに、少々気が滅入った私を見逃すまいと、
「木月!シャキッと歩け!」
と上官に喝を入れられる。
「はい、申し訳ありません。」
私は気を取り直して背筋を伸ばし、再び歩を進める。
ふと、目に入った通り沿いののぼり旗を眺め帰宅後の予定に思いを馳せる。
今日は、帰ったら不死川サンとおはぎを食べに行く約束なのだ。
(早く帰らなきゃ、楽しみ!)
そんな予定と昨夜の不死川サンに包まれた温もりを思い出して、思わずニヤニヤしてしまった私に、
「木月!」
と再び上官からの喝が入るのであった。