第12章 春疾風
「不死川サ…様、ただ今戻りました!」
必死に息の乱れを隠さんとしながら庭先の不死川サンに跪いた私と
その後ろで誇らしげに羽をパタパタさせている爽籟と
…唖然とする不死川サン
「「「・・・」」」
「サネミー!花耶ツレテキタァ」
「ア“ァ」
沈黙を破った爽籟を鋭い眼で睨みつける不死川サン。
「誰が、ンなこと頼んだァ?花耶引き摺り回してんじゃねェ」
やはり、私の息が上がっていることはバレていたらしい。
爽籟はきっと初めて見る人は縮み上がるんじゃないかと思う剣幕の不死川サンをものともせず、
「サネミ、花耶ヨンダ。花耶ナカナカハヤカッタァ!」
と爽籟がまた羽をパタパタさせる。
必死に走った私は爽籟に満足いただけたらしい。
「爽籟、ありがとう。」
「チッ」
バサっ
「カァ」
私の肩に止まろうとした爽籟を払いのけた不死川サンの腕を認識した直後には私の体はいつのまにか不死川サンに抱えられていて、お姫様抱っこ状態。
払い除けられた爽籟が、
「カァ」
ともう一度不服そうに鳴き不死川サンの肩に止まる。
「不死川サン…?」
私は不死川サンを恐る恐る見上げる。
長いまつ毛が美しくて惚れ惚れしてしまう。
「なんだァ?疲れただろォ。」
そう言いながら目が合った不死川サンの頬がほんのり染まっているのを花耶と爽籟は見逃さなかった。
そして、ニヤニヤしている1人と1羽に気づくと、優しい手つきながら私サッと縁側に座らせ、
「待ってろォ。」
と不死川サンはそそくさと台所へ向かう。
そして、私といつのまにか不死川サンの方から縁側に降り立った爽籟はそんな男の背中を見送りながら再びニヤニヤと顔を見合わせるのであった。