第10章 さくらさく
ー実弥sideー
花耶の作ってくれた夕食を食べ、風呂を済ませた花耶と俺は、俺の布団の上。
普通恋人なら、甘い夜の始まりだが今ここは治療の場。
「不死川サン、傷良くなってきてますね。痛みなど気になる事はありませんか?」
と真剣な表情の花耶。
「アァ。このままだと体鈍っちまうから明日から訓練してもいいかァ?」
普段なら勝手に動いちまうところだが、傷がうまく治らず花耶ががっかりする姿を見たくないので了承を得ることにする。
「はい。動かしやすいように包帯巻いておきますね。」
と言って花耶は、薬を手に取り傷に優しく触れる。
(これは治療だ…。)
不純な自分を花耶に悟られねぇように、昂りそうになる自分を必死に抑える。
それでも花耶に触れたくて、包帯を巻き終えて俺の夜着の合わせを整えた花耶を抱きしめようとするとスルッと逃げられてしまい、
「不死川サン、訓練無理してはダメですよ。胡蝶様に怒られるの私なんですから。もー、怪我人は早く寝てください。」
と花耶に言われてしまう。
夕方の口づけを思い出したのか、ほんのり頬が染まっているところが可愛いらしい。
「花耶もゆっくり休めよ。」
「ありがとうございます。不死川サンおやすみなさい。」
「アァ、おやすみ。」
と言って部屋に戻っていく花耶を見送る。
お互い早く寝ろと言っておきながら、その夜の俺と花耶は、隣の部屋にいる恋人となった存在を意識してしまってなかなか眠る事ができないのであった。