第10章 さくらさく
「んっっ…。」
私、夕暮れ時に差し込んだオレンジ色の光の眩しさで夢から目覚める。
(せっかく勉強しようと思ったのに寝ちゃった…。)
目は閉じたまま伸びをしよう頭の方に手を伸ばすと、
(ん?何かにぶつかった…?)
恐る恐る目を開けると、不死川サンが私の顔をまじまじと覗き込んでいて、伸びをした私の右手は、不死川サンの脇腹をこづいてしまったようだ。
慌てて腕を引っ込め咄嗟に頭まで被ると、
「目、覚めたかァ?」
と布団越しに不死川サンの優しい声。
(昨日不死川サンのお隣で寝てしまって、不死川サンにも胡蝶様にも申し訳なかったのに、不死川サンのお隣でまた寝てしまった…。)
と恥ずかしさと共に反省する。
私は、不死川サンの様子を伺うため恐る恐る布団から頭を出し不死川サンの顔色を伺う。
怒ってはいないようだけどやっぱり申し訳なくて、文机に向かう不死川サンの横に正座し、
「も、申し訳ありません。不死川様っ。」
慌てて謝るが、
「あ゛ァ?」
と不機嫌な不死川サン…。
(家に通させて、すぐ寝てしまうとかやっぱり失礼でしたよね…。)
と再び反省する私に、
「何、余所余所しく喋ってんだァ。ここではその喋り方禁止なァ。」
と全く別方向の指摘に驚く。
「は、はい。連日、うたた寝してしまって恥ずかしいです…。」
と答えた私を不死川サンは、文机から私に体の向きを変えて抱き締める。
「気にするなァ。疲れてるだろ。」
と優しい言葉の後に、
「まぁ、毎日隣で寝てくれても構わなぇけどなァ。」
なんて囁く。
心臓の音が不死川サンに伝わってしまいそうで恥ずかしい。
だけど、自分から言い出しておきながらちらりと見えた耳がほんのり赤らんでいる不死川サンも可愛らしい。
答えに困り、なぜ不死川サンのお部屋にいるかはわからないけれど本を読みながら寝てしまった事は思い出し、
「あの、お布団かけてくれてありがとうございました。もう、夕方ですね。不死川サン、お台所お借りしてもいいですか?」
と言って離れようとする私を、不死川サンはまたギュッと抱きしめる。
(私も離れたくはないですよ。)
そんな気持ちが伝わるように私も不死川サンの背中に手をまわした。