第10章 さくらさく
不死川サンを連れ立って、私は自宅に向かった。
さっき不死川サンの立派なお屋敷を見てからだと、自分が住んでいる長屋にお連れするのは恥ずかしい。中に入ってもらうのも、少し躊躇する。
だけど、この長屋も鬼に襲われて両親を亡くし、行く宛のなかった私にとっては大切な場所。住人は、一般の人もいるが鬼殺隊の隠しも多くて同じような境遇の人も居る。
それに、隠し達の中で、柱さらにはその中でも格段に恐れられている不死川サンが、この長屋にいると知られたらちょっとした騒ぎになりかねない。仲間の平穏な日常を崩しかねない。戸口の前に待たせておくわけには行かないのだ。
「狭いですが、どうぞ。」
と不死川サンを招き入れると
「アァ。お邪魔するなァ。」
と言って入ってきた不死川サンは、土間で佇んでしまって、
(やっぱり、自分の屋敷に比べて狭すぎて引いてる?)
「あ、でも本当に狭くて、ごめんなさい。あの、適当に座ってください。」
と謝りながら1番の目的だった薬箱に直行する。
不死川サン、居心地良く無いかもしれないから早く支度しよう。
「何謝ってんだァ?いいから、薬箱だけじゃなく花耶の支度もしろよォ。まぁ、1、2週間くらいかァ。」
「は、はい。」
そうだった。胡蝶様からの任務、不死川サンの傷の手当ての間、不死川サンのお家にお世話になるんだった。
ここにくる間、何度も
「申し訳ないので!」
と不死川サンに言ったのに、
「危ねェ。却下。」
とあの顔で睨まれたらもう何も言えない。
柱のお家に厄介になるなんて聞いたことないし、何より私の心臓が持ちそうにないけど…。