第9章 春を待って
ー実弥sideー
「どうしたァ。」
と花耶との距離を縮めて聞く。
「わ、私、隠し…いや人間失格なんです…。」
(なんだその小説の題名みたいなのは…。)
と思いながらも次の一言を待っていると、
「私、不死川サンの傷がなかなか治らなければいいのになんて思ってしまって…。不死川サンがまた任務に戻られたら、私は不死川サンが怪我をしている事を期待して探してしまうかもしれないと最低な事を思いまして…。」
と本気で泣きそうな顔をして思いを吐き出す。
花耶がここまで、言ってくれたのだから自分だけ逃げ続ける訳にはいかないと俺も腹を括る。
「自分のこと最低とか言うなァ。俺も、任務の度にお前が探してくれんの待つのは嫌だァ。お前を離したくねェ。だが、俺の目的は、一体でも多くの鬼を殺すことだァ。お前を残して鬼に殺られるかもしれねェ。お前を幸せにできる自信がねぇんだァ。」
と言うとさっきまで泣き出しそうだった花耶が、急に俺に向き直って、
「私だって隠しです。剣士様には及びませんが鬼殺隊の一員です。それくらい覚悟できてます。好きになってしまったのだから仕方ないじゃないですか…。」
と俺に言い放つ。
俺がなにも言えずにいると、怒鳴ってしまったことをマズイと思ったのか、
「も、申し訳ありません。」
と駆け出そうとした手を掴んで抱き寄せ、
「悪かったなァ、花耶好きだァ」
と、とうとう素直な気持ちを告げると、
「私も不死川サンのことが好きです。」
言って花耶も恐る恐る俺の背中に手を回して俺は幸せに包まれた。