第9章 春を待って
胡蝶様に連れられ、私は不死川さんのいる部屋へ向かう。
「不死川さん、お待たせしました。」
と声をかけた胡蝶様に続いて部屋に入ると、昨日のお布団に入って姿とは異なり、身支度を整えた不死川サンが立っていて、
「アァ。」
と返事をしている。
はだけた胸元から包帯が見えなければ、それはいつもの不死川サンで、怪我の経過が良い事に安堵しつつ、見惚れてしまう。
「木月さん、不死川さんをご自宅までお送りしていただけますか?」
(構わないけど、不死川さんも子供じゃないんだから自分で帰れるのでは…?)
そんな私の心を読んだかのように、
「不死川さんお一人ですと無茶するといけませんし、本当は私が見張りたいのですが、任務がありますので。よろしくお願いしますね。」
と言い部屋から出て行こうとする胡蝶様に、“必要ねェ“とでも言うかと思ってた不死川サンは、
「胡蝶、世話になったなァ。」
とお礼を言い、私の方を向いて小さく
「行くぞォ。」
と声をかけてくれて、私は大人しく不死川サンについて行く事にした。