第7章 夢の中の君ー実弥sideー
俺は、おはぎを一旦皿に置き、
「まぁ、入れやァ。」
と声をかけると花耶が俺の横までやってくる。
「不死川様、お加減いかがですか?」
「アァ、さっき目覚めたところだァ。問題ねェ。」
と伝えると花耶は、ホッとしたような表情になる。
そして手に持っていた風呂敷を、おはぎの置いてある枕元の小さな台に置いて広げる。
いつもの店のおはぎと見慣れない包み。
「流石に、おはぎもういらないですよね。不死川様、いつ目覚めるかわからなくて、なんだか毎日買ってしまって…。」
俺が寝ていたのが二日間、蝶屋敷に運ばれ今日で三日目。
なるほど、さっきしのぶの言ってた、“もうすぐ3つめが来る”というのは、そういう事か。
「いや、ありがとうよォ。お前も食ってけェ。」
そう言ったもののなかなか頷こうとしない花耶のお腹が、“ぐー”となり、
「なァ」
ともう一押しすると、コクリと頷く。
そして、気になるもう一つの包みを指差して、
「それは何入ってるんだァ。」
と聞くと、
「任務帰りに見かけた甘味処で買った桜餅です。とっても美味しそうで!おはぎは、なかったのでいつもの所のものですが…。」
任務帰り…。
花耶に聞くと、担当地区の中でもまぁまぁ離れた場所で、
(珍しい店に寄ったのはわかるがわざわざいつものおはぎ屋まで寄ってきたのかよ…。オイオイ、コイツどんだけ歩いてるんだァ。)
俺は、布団の中の体を少し横にずらして、
「ここ座れェ」
と花耶を手招く。
素直に俺に近づいて横に腰掛けた花耶に、
「そうじゃねェ。下駄脱いで、足伸ばせェ。」
と言い布団をめくる。
躊躇する花耶に、
「何もしねぇからよォ。歩き疲れてんだろォ。」
と言うと花耶は、ゆっくりと下駄を脱いで布団の中で足を伸ばす。座って足を伸ばさせただけだが、このまま花耶が、寝転んだら何かしてしまいそうだ。
そんな横縞な気持ちを断ち切るように、
「おはぎとってくれるかァ。」
と花耶に頼む。
先程風呂敷から出した1番新しいおはぎを差し出そうとする花耶に、
「皿ごとでいい」
とおはぎが2つ乗った皿を取らせ、先程食べようとしていた先に食べた方がいいであろうおはぎを口に運んだ。