第7章 夢の中の君ー実弥sideー
おはぎのいい匂いとともに日の光を感じ、目を開けると真っ白い布団の中…。
周りを見渡し、蝶屋敷であることに気づく。
左腕に目をやると丁寧に巻かれた包帯。
(夢の中でも花耶が、丁寧に手当してくれたなァ)
さっき見た夢の余韻に浸っていると、
「おはようございます不死川さん。目覚められましたか。良かったですねぇ。」
と、この屋敷の主、胡蝶しのぶが現れた。
胡蝶は、俺に近づき肩から胸の大きな傷を確認し、
「かなり深い傷でしたが、大丈夫そうですね。」
と言って立ち去ろうとしながら、
「あ、そういえば。そちらのおはぎ、奥のものから食べた方がいいですよ。不死川さんも心配してくださる方がいるのですね。しかも、とても可愛らしい。柱同士なのだから、紹介してくれてもいいじゃありませんか。」
枕元に目をやるとおはぎがふたつ。
再び、しのぶを見ながら、
「そんなんじゃねェ。」
と言い返すと、
「早く食べないともうすぐ3つめが来ますよ。彼女、もうそろそろ来るお時間ですから。それと、心配してくれる方がいるなら早く大切にしたほうがいいですよ…。」
しのぶに言われてしまうと何もいえねぇ…。
また、一つ辛い過去を思い出し鬼への憎しみが込み上げる。
冷静さを取り戻しつつ、
「アァ…。」
と答えるとしのぶは、部屋から出ていった。
しのぶの言う通り、奥のおはぎを手に取る。
流石に、腹が減った。
口に運ぼうとしたところで、
「不死川サン…。」
と入口の方から小さく名前を呼ばれ目をやると花耶が立っていた。