第7章 夢の中の君ー実弥sideー
夕暮れ時
そろそろ街の外れに着くというところで、
「そっち…怖い…。」
と花耶が俺の羽織を掴む。
「大丈夫かァ。」
声をかけながら、俺も足を止め周囲を探るように見渡す。
隠したちは、柱だ、剣士だと日頃並々ならぬ敬意を払ってくれるが、俺より先に鬼の気配を察した隠しのコイツもまた鬼殺隊の一員だなと思う。鬼殺隊にも、飛び抜けて鼻が効くヤツや耳のいいヤツがいるが、それ程でなくともやはり皆、鬼が近くにいれば何か感じる。
まぁ、花耶場合、自分が鬼に襲われた時の事を勝手に体が覚えてしまっているというのが大半の理由だろうが…。
今でも十分楽しいが、花耶はどうやら昔俺が助けたことは覚えてないようだ…。別に覚えてなくても構わねぇが、鬼の気配はこんなに覚えてるなんぞ、腹が立って仕方がねェ。
「あの端の家だなァ。気配がしやがる。」
と呟く。
(ッチ、もともと鬼の居場所が見つかりゃ花耶を帰すつもりでいたが、人の恋人気分を邪魔しやがって鬼めェ。俺が、倒してやらァ)
花耶は、もう一度羽織をグッと握りめてきて思わず、
(最後の恋人気分だァ、許せェ。)
と思いながら花耶を抱き寄せる。
「連れて来ちまって悪かったなァ…。日が落ちる前に、仲間を呼びに戻ってくれるかァ。」
花耶は、ようやく安心したようで安堵するが、今度は、なかなか動こうとしない。
ようやく、花耶が、返事をするように頷くと、俺は名残惜しく腕を解いた。
花耶の顔を見つめれば、昔コイツが鬼に襲われたにできちまった頬の傷。おしろいで薄くしているようだが、俺は知っている。
(鬼めェ、花耶にこんな傷つけやがってェ。それに、俺がもっと早く助けてやりゃぁつかなかったのによォ…。クソ…)
たまらず、指で優しくなでながら今夜も醜い鬼を倒すことを誓う。
傷跡から手を離し、
「行ってくらァ。気をつけろォ。」
と花耶に言うと
「はい。不死川サンもお気をつけて。おはぎ約束ですよ。」
と見送られ、俺はもう照れ隠しなんぞやめて、
「アァ。」
と返事をし、鬼の元へと向かった。