第7章 夢の中の君ー実弥sideー
簪の礼を言う花耶に、もう少し付き合えと提案する。
(まぁ、一人にしたくないから決定事項だけどなァ。)
だが、花耶の返事が、思いの外たどたどしく、さっきまで恋人設定を利用して浮かれていた自分がひどく不安になる。
おはぎを食いに誘った時もよぎったが、どうしてもこの問いを花耶にしないと落ち着かない。
「俺と歩いてるのを見られちゃ困るわけでもあんのかァ…?思い人とかヨォ…。」
俺が急に変なことを聞いたからか、花耶は、少し驚いた表情をしながら、
「いえ、そのような方などおりません。不死川サン、次どこ行きますか?」
その答えに俺は、思わずホッとしてしまう。気を遣って話題を変えようとしてくれた花耶に甘えて話題を変える。
さっきから、花耶の言動に一喜一憂している自分を戒めるように表情を整えると、
「街の外れが怪しいらしい。はぐれるなよォ。」
と花耶に伝えると、素直に真横にピッタリとくついてくる姿が可愛らしく、ただ横を歩いているだけで満足してしまう。
気の利いた話題も提供できないまま、そんな小さな幸せに満たされながら歩いていくと街の外れに近づく。人もまばらでお店も閉まっているところが多くなり、やはりこの先が怪しいなと感づく。
もう、花耶とのこの時間もそう長くないだろう。
「この任務が終わったらよォ…。おはぎ食べに行ってくれるかァ。」
この前のおはぎの約束、もう一度確認しておきたい。
「はい。この前からずっと楽しみでした。」
その答えに安堵していると、花耶は、
「不死川サンは?」
なんて聞いてくる。
(やめろォ、照れるじゃねぇかァ。まぁ、恋人設定なんだしいいかァ。)
照れ隠しをしながらも、
「アァ、楽しみだなァ、花耶とおはぎ…。」
と珍しく素直に気持ちを伝えてみると、花耶は、
「約束ですよ。」
とふふっと嬉しそうに微笑んできて、可愛さにニヤけた顔を見られたくない俺は、思わず顔を背けた。