第5章 素敵な人ですね
店員さんは、何度も可愛いと言ってくれながら、私を不死川サンのもとへ戻す。
「あ、お待たせしました。」
自然に見えるように、仕事の時より柔らかく声をかける。
「ンな、待ってねェからいい。」
不死川サンの口調も柔らかだ。
そんな私たちを見ていた店員さんは、不死川サンを少し手招きして
「可愛らしいですよね!」
と言いながら簪をさした私の髪を見せている。
(恋人でもないんだからそんなこと言われても困るんだろうな)
という私の心配に反して、
「アァ、似合ってる。」
と今度は顔を覗き込まれてドキドキしてしまう。
(そんな渾身の演技しなくても…)
私は、演技なのにまともに間に受けて照れてしまっていることを必死で隠そうとしながら、
「あ、ありがとうございます…。」
声を絞り出した。