第5章 素敵な人ですね
早朝に解散したあと再び集合した私たちは、昼過ぎに街へ到着した。幸い、不死川サンより早くついたらしい。
滞在する宿で荷解きを終えると、夜の任務まで自由時間となった。
「先輩、街へ行ってきます。夕方戻りますので。」
「花耶ちゃん、体力あんのね〜。私は、仮眠とるわ。いってらっしゃい。昼間だけど気をつけんだよ。」
「はい、行ってきます。」
といって私は、着物姿で街へ出る。
ここへ来る間、可愛らしい雑貨屋さんが目に入り、どうしても行ってみたかったのだ。
お目当ての店に着いて軒先の品物に目をやると、一本の簪に目を奪われた。先端に、薄い緑で風車のような模様が描かれている。
(素敵な簪…)
見惚れていると、
「オイ、何やってんだァ。」
という最近よく聞く声に顔を上げた。
「それ欲しいのかァ」
と聞かれても突然のことに頭が働かない。
(欲しい…)
何も言ったつもりはないのに、その人は簪を掴んで
「オイ、これくれェ」
と店員さんに声をかけに行ってしまった。
お代を払いお店の人とやら話してから戻ってくるその人は、そう不死川サン…。