第4章 おはぎを食いにー実弥sideー
ー甘味処で花耶を見かけてから半月ー
近頃俺は、担当地区の警護、鬼の調査で忙しくしていた。3日ほど前も、担当地区内で行方不明事件が起こっているらしいことを鎹烏に知らされた。絶対ェ鬼の仕業だ。醜い鬼は、俺が殲滅する。
だがそのせいで通常任務は他の隊士に任せているため、俺は花耶に会えずにいた。昨日も一服しようと、あの甘味処におはぎを買いに行ったが、そう何度も偶然会えるほど都合は良くねぇ。
なんだか悶々とした俺は、忙しい合間をぬって、伊黒の屋敷を訪れた。
「最近、甘露寺とはどうなんだァ」
「甘露寺の事を聞いてくるなど珍しいな。気になる女でもできたのか。」
「…ま、まァそんなところだなァ」
正直なところ俺は、甘露寺のアホっぽい所が苦手だ。伊黒とは、1番気の合う友達だが、女の趣味は合わない。
「甘露寺とは、文通したり、飯に行ったりする。美味そうに食べるのを見た後は、いつもより食欲が湧く…。」
なるほど…。
伊黒に、簡単に甘味処で遭遇した話をすると
「それなら、おはぎ食いにでも誘うといい。」
と指導された。
確かにそれは、俺だって行きたい。
好物のおはぎを花耶と食べられたら、疲れも吹き飛びそうだ。
伊黒に礼を言い、俺はまた神社に寄って帰った。
“花耶に会えますように”なんて、人には言えねぇ恥ずかしいお祈りをして。