第2章 お怪我はありませんか
外に出ると不死川サンにクルっと後ろ向きにされる。
(背中見られてる?それとも私の顔見たくない…?)
そんなことを考えている間に、再び、手を引かれてクルっと元に戻される。思わず不死川サンを見上げると
「悪ィな…隊服に俺の血ィ着いちまったァ」
と謝られてしまった。
(きっと、抱きしめられた時に不死川サンの腕の血が着いたんだ。なんか思い出すと恥ずかしい…。でも、お怪我されてるならちゃんと手当てしないと!)
「そ、そんな、謝らないでください!アレは、私の不注意でしたし、隊服に血がつくなど慣れっこです。そんなことより、不死川様、腕出してください。」
相変わらず、不死川サンはなかなか腕を出そうとしない。
(仕方ない。ちょっと強引な手を使わせていただこう)
「私の隊服に、血ついてるんですよね?」
私がそう言うと不死川サンの表情が揺らぎ、ゆっくりと両腕を差し出してくる。さっきまではよく見えなかった左腕の内側に切り傷、右肘の辺りには、戦闘時に擦りむいたであろう擦り傷、どちらも血は殆ど止まっている。
前回の血が滴っていた切り傷よりも軽傷でほっとする。
それでも腕を差し出してくれた不死川サンが可愛らしい。先輩達の会話を聞きながら想像してしまった“怪我をした野生動物=不死川サン”を思い出してニヤついてしまう。
左腕の切り傷に薬を塗り、軽く包帯を巻き終わると、『終わったか?』と言うように見つめてくるので、
「不死川様、次は右腕を」
というと
「こんなもン、大したことねェ」
と抵抗する。
(さっきまで素直に腕見せてたじゃない)
「擦り傷は、きちんと消毒しないと治りが遅くなります。腕、貸してください。」
「…アァ」
不死川サンは、観念したようで腕を差し出してくれた。
すかさず、腕を掴み、薬箱から消毒、薬、ガーゼを取り出して手早く処置する。不死川サンの気が変わらないうちに…。
手当てが終わり、不死川サンに声をかける。
「不死川様、おまたせいたしました。」
「アァ、…ありがとよォ」
(不死川サンから“ありがとう”とか言われると思ってなかった…)
「い、いえ、こちらこそ本日はご迷惑をお掛けしまして…。助けていただき、ありがとうございました。」
と慌ててお辞儀する。
不死川サンは、
「アァ、気をつけろォ」
と言って帰っていった。