第2章 お怪我はありませんか
とりあえず不死川サンを探そうと、鬼の襲撃現場となった家の中の入口に一歩足を踏みいれる。
部屋の方を覗くと戦いにより障子は破れ、所々外れている。
畳にも無数の大きな傷。
その先に不死川サンは、1人で立っていた。
「不死川様!」
と声をかけて部屋に上がろうとすると
「来んじゃねェ」
と言いながら睨まてしまった。
(やっぱり、傷の手当て嫌なのかな。先輩、私なら大丈夫なんて言ったけど、全力で拒否られてるじゃない。でも、鬼を倒す剣士様とは違うけれど、私にとってはこれが任務。行かなきゃ!)
決意を固め、ボロボロの畳の上にあがり、私を睨んでいる不死川サンに近づく。
あと数歩というところで、何やらガタっという音がして右側を見上げると、辛うじて外れていなかった障子の一枚が倒れてくるのが見えた。
不死川サンが立っている位置は、大丈夫そう。
(間に合うかな…)
私は、障子の直撃を避けるため、一気に不死川サンの所まで駆け寄ろうとした。
…と同時に左手首を掴まれたような気がして…
気がつくと私は、不死川サンに抱き寄せられていた。
後方でガタンと大きな音をたて障子が倒れきったのがわかる。
「不死川様、申し訳ありません。」
私は、急いで離れようとするのだか、不死川サンの腕は全然緩む気配がない。
「来んじゃねェって言っただろうがァ…気をつけろォ」
「申し訳ありません。助けていただき、ありがとうございます…。あの…もう大丈夫ですので…」
恋人でもなんでもない、寧ろ柱いう敬意を払うべき存在。なのに、不死川サンの腕の中は心地よくて、自分から「大丈夫」なんて言ったくせに名残惜しい。
ようやく、私を抱きしめていた不死川サン腕が緩んで体が離れる。
不死川サンは、腕を解ききると、
「…チッ、この家もォヤベェ。来い。」
と呟いて再び私の手を取ると外に向かって歩き出した。私は、“殺”の文字を背負う鍛え抜かれた背中を見つめながら、置いていかれないように早足で歩いた。