第6章 Season 1 後悔
「なんか、あった?」
「……私……」
裕の肩に頭を預けると、涙が裕の肩口を濡らす。
「もしかして……治さん?」
「……私、断れなかった……」
裕たちと関係を持って、今更抱かれるつもりはなかったのに、やっぱり嫌だって言えなかった。
ただ、黙って抱かれるしかできなかった。
「だいじょぶ。だいじょぶだから。慧さんは間違ってないよ。本当は、それで正しいんだから、ね」
言いながら、裕はぎゅっと腕に力をこめてそれからまた背中をさすってくれる。
「でもっっ……すごく嫌、だった」
「……そっか」
「悪いのは、私……なのに。裕やっ、紘に甘えてしまった私が悪い、のに……」
ぐずぐずと泣きながら、裕にそう言ったが、裕は否定も肯定もせずに、私の背中をさすってくれていた。
しばらく裕の肩を借りて涙を流すと、だいぶ落ち着いてきて、私はようやく顔を上げることができた。
「ごめんね……」
口元をきゅっと引いて、無理矢理笑顔を作って裕にそう伝えた。
「慧さん……俺……」
もう一度ぎゅっと私を抱きしめると裕は、
「俺、結局慧さんの力になれてないのかも……。自分の気持ちばっか押し付けて慧さん抱いて、結局慧さん困らせてるのかも……。なのに、俺……なんかすっごく治さんに腹立ってる。でも、だからって慧さんになんもしてあげられない。俺こそ、ほんと、ごめん」
悔しそうにそう言った。
壊れた歯車の隙間で、つまっている思いが、裕の心を傷つけてしまっている。
流れとは言え、今裕に吐き出してしまった自分が憎かった。
「俺が、慧さん抱かなけりゃ、慧さんこんな辛い思いしなくてよかったかもしれないのに。ほんと、ごめん」
「……どうして裕があやまるの?私は裕とのことは後悔してないから。たぶん、これは私の弱さが招いた私への罰だよ。私ひとりが受け止めなきゃなんないんだ。だから、裕は、なんにも悪くない」
「でも……っ」
「大丈夫。私は、大丈夫だから」
私が強くなきゃ、裕まで不安にさせてしまう。
しっかりしないと、と言葉に力をこめた。