第6章 Season 1 後悔
そうしているうちに、少し胸がムカムカしてきて、こんなんじゃ駄目だなと思いながら、何か飲み物を探しにキッチンへ向かった。
リビングにはもう誰もいなくて、電気も消えている。そのことに、心底ホッとした。
こんな状態で、裕や紘には会いたくなかった。
ため息をつきながら、キッチンに行き、冷蔵庫を開けると、冷蔵庫の明かりがふわっとあふれ出て、少し安心した。
ビールの缶が目に付いたが、とてもアルコールを飲みたい気分にはなれなくて、代わりに麦茶のボトルを手に取った。
キッチンの、シンクの上の電気だけをつけると、グラスを出し、お茶を注ぐ。
シンクと食器棚のあいだに座ると、背中を食器棚に預けてグラスを傾けた。ふと、また涙が溢れてきた。
しばらくすると、リビングのドアが開く音が聞こえた。
私が寝室に行かないから、気になって治さんが探しに来たのかと思ったのだが、
「慧、さん?」
違った。
私が今一番会いたくなかったほうの一人、だ。
私は、返事もせずにそのまま体操座りのような形で顔を膝に埋めた。
電気がついてるからキッチンのほうにいると思ったのだろう、裕はこっちに近づいてきて、顔を覗かせた。
「こんなとこにいる。どしたのー?」
いつもと同じトーンの声で言いながら私の隣に座った。
「……どうも、しないよ」
「そうお?なら、いいけど。俺ものど渇いちゃって。二階の冷蔵庫なんも入ってないんだもん。ねぇそれちょーだい」
私の持っているグラスを奪いとり、中身を一気に飲み干したようだ。
私はまだ顔を上げれていない。
「なんでこんなとこでうずくまってるかなぁ。変な慧さん」
言いながら私の背中に触れられ、
「……やっ」
私は反射的に身体を起こして、裕の手を振り払ってしまった。
「……え?ちょっと、慧さんどうしたの?それ……」
身体を起こした事により、肌蹴た胸元が裕にさらされてしまった。
「それに……やっぱり泣いてた?」
私の頬に残る涙をなでながら、裕が優しく聞いてきた。
私は自分の胸元が肌蹴ているままな事にようやく気づき、慌てて布をたぐりよせる。
「大丈夫?」
私の身体を引き寄せると背中に腕を回し、そっと撫でてくれた。